山崎ナオコーラ(河出書房新社)
なんだかんだでこの人の本を4冊連続ハードカバーで買っている。
ファンというわけではない。でも、目の付けどころが面白いのだ。
「働かざるもの、食うべからず」と言われて育った銀行員の小太郎が結婚した鞠子は、
さっさと仕事を辞め専業主婦になり、趣味に生きる生活を始めた。
絵手紙、家庭菜園、俳句、小説と、小太郎の稼いだ金で悪びれず
どんどん趣味の世界を拡げていく妻に最初は呆れ気味だったが、
次第に小太郎の生き方にも影響を与えていく。
私自身も"自立"の強さを信じて生きてきましたが、
鞠子の母の「他立にも美しい立ち方があるのかもしれない」という言葉に
はっとさせられました。
「趣味によって助け合いが生じることがあるんだなあ、って気がつきましたよ。趣味って、悲しい出来事があったときに役立つんですね。悲しみや悩みに直接効く薬がなくても、別の視点や違う考えがひゅっと頭に入ってくるだけで、癒しになることがある。あるいは、手作業に夢中になることで救われることがある。手作業は祈り、って聞いたことがあります。そう考えていくと、趣味が社会を回しているのかもしれない。仕事だけでは救えないことが世界にはあるんでしょうね」(「単身赴趣味を希望する鞠子」より)
0コメント